
和包丁にふつうの砥石を使ってもよいのでしょうか。
どんな包丁も研げる一本はあるのでしょうか。
よくいただくご質問です。問いは簡単ですが、答えは長くなります。さっそく始めましょう。
まず、砥石にあまりなじみのない方のために、ざっと基本をご説明します。
番手(グリット)とは砥石の粒度のことです。数字が大きいほど一度に削る金属の量は少なく、数字が小さいほど一度に多くの金属を刃から削り取ります。イメージしやすいように、
おおよそ次のように分けて考えています
- 荒砥(0〜599番)
2. 中砥(600〜1999番)
3. 仕上砥(2000〜5000番)
4. 超仕上砥(5001〜12000番以上)
さて、和包丁の多くはよく切れるように作られていて、硬度はおよそ56HRC(刃の硬さ)以上あります。ですから、こうした和包丁を研ぐ砥石には1000番前後(中砥)がよく使われます。これで十分に良い切れ味が出ます。
ただし話はそれだけでは終わりません。鋼材の硬さや粘りという問題もあります。たいていの和包丁であれば、ナニワのMedium Stone 1000番でかなり満足のいく結果が得られます。
では、ほかの国の包丁はどうでしょうか
ヨーロッパの包丁について申し上げますと、やはりビールの国の包丁は避けて通れません。タイでいちばん広く使われているWブランドとZブランドです。私どもの経験では、WのほうがZよりはっきり研ぎやすいと感じます。とはいえ、どちらのブランドも、研ぎに慣れていない方がナニワのMedium Stone 1000番で研ごうとすると、疲れるばかりでほとんど進みません。ドイツの包丁は粘りが強いことが特徴だからです。そこでおすすめしたいのがナニワのTraditional Stone 1000番です(ナニワがヨーロッパの包丁向けに設計した品番です)。金属を削る速さが際立っており、使えば作業がずいぶん楽になります。
では、この砥石を和包丁に使うとどうなるのでしょうか。場合を分けてお答えします。ステンレス製の和包丁であれば問題はなく、むしろいっそう速く進みます。ただし鋼(さびる種類)の包丁については、削る速さが強すぎるため、ナニワはあまりすすめていません。鋼はもともと研ぎやすい鋼材ですから、その必要がないのです。
タイの包丁はどうでしょうか
100バーツ以下のタイ製ブランドの包丁は、金属の組織が粗く、しかも鋼材がかなりやわらかいものがほとんどです。そのため1000番の砥石を使っても金属がほとんど削れず、いつまでも切れるようになりません。おすすめは220番程度です。ナニワにその粒度の砥石はあるのか、といえば、Naniwa Aoebi 220(日本製)があります。しかし価格は2千数百バーツで、100バーツに満たない包丁の20倍ほどになります。牛刀をもって鶏を割く、といったところでしょう。そこでおすすめするのがNaniwa Lobster 220番(ベトナム製)で、価格はぐっと手ごろです。もちろんベトナム製の砥石は、日本製ほど速くは削れません。しかし研ぐ相手の鋼材がもともとやわらかいのですから、それで構わないのです。私どもの経験では、十分によく使えます。ただし、この価格帯のすべてのブランドを試したわけではないことは、あらかじめお断りしておきます。とはいえ、かなりの数は試してまいりました。
中国の包丁はどうでしょうか
私どもが目にした中国の包丁は、タイのものよりかなり品質が良いと感じます。もちろん和包丁にはまだ遠く及びません。この場合、節約されたい方にはNaniwa Lobster 1000番(ベトナム製)をおすすめします。金属の組織はまずまずでも、硬度は和包丁よりかなり低いため、Naniwa Lobster 1000番(ベトナム製)でも十分に対応できるからです。楽に速く研ぎたい方は、Naniwa Medium Stone 1000番(日本製)のほうがさらによいでしょう。逆に、Naniwa Lobster 1000番(ベトナム製)で和包丁を研げるかといえば、汗をかきながら研ぐことになり、包丁も砥石も時間も無駄になります。とても割に合うとは申せません。
ここに書いたことは、知識と経験の両方にもとづいています。経験の部分については、ほかの方が同じ砥石でこれとは違う印象をお持ちになることもあるでしょう。また、すべてを文章にお伝えしきれるわけではないことも認めます。お読みになってよく分からない点があれば、あるいは直接お尋ねになりたい、ご自分の包丁にどの砥石が合うか知りたいという場合は、お電話でお約束のうえ店頭までお越しください。私どもはほとんど毎日、店におります。